人権学習、高総体、そして次へ

 
 


長崎県立五島海陽高等学校
校 長   古川 賢一郎

 6月2日の総合開会式から始まった第69回県高総体が終了し、本校でも6月8日に主将による報告会が行われました。どの部も自分のベストの力を発揮し、部活動の総決算にふさわしい戦いができたと思います。顧問の先生からは、全力を出し切った生徒の晴れやかな表情が印象的だったと報告がありました。試合に出場した人も応援に回った人も、この経験は大きな財産になるでしょう。また、離島からでしたが、保護者の方々も多数応援に来られており、チームは勇気づけられたと思います。皆さんお疲れ様でした。

 さて先月、五島高校との合同人権学習として「いのちの教育」講演会が行われましたが、その中で、講師の長崎大学の岡田准教授から、『車輪の一歩』というテレビドラマが紹介されました。有名な作品で、私も38年前にテレビで観て魂を大きく揺さぶられたことを思い出しました。物語は、車椅子の青年たちが、文通で知り合った家に閉じこもっている車椅子の少女に対し、一緒に外に出て楽しもうと連れ出しますが、結果的に少女を傷つけ周囲にも大きな迷惑をかけてしまい、失意のどん底に突き落とされた状況から展開します。そのとき青年たちと面会した主人公(吉岡司令補)は、彼らに対し、「君たちは特別な人生を歩んでいる。(節度は必要だが)、もっと外に出て迷惑をかけていいのではないか。かけなければいけないのではないか」「障害を持つ人が世話になるたびに後ろめたい気持ちになる社会こそおかしい」「並の人間と同じ事を守ろうとするから歪むんだ。堂々と胸を張れ」と諭します。その後、彼らは再び町に出、少女が駅の階段で自分に手を貸してくれるよう周囲に呼びかける場面でドラマは終わります。 私たちは、「人に迷惑をかけない」「社会の役に立つ」よう振舞うべきだという常識の中で生活していますが、その逆に対しては拒絶する考えを持っていないでしょうか。岡田先生は、弱い人が生きていけるよう、自分の権利や自由を「何気なく」「自分のできる範囲で」提供できる人こそ、「かっこいい大人」だと表現されました。短い時間で、しかもドラマの一部分を切り取っての講演だったので生徒が理解できたか心配でしたが、事後の感想文を読むとよく真意を掴み取ってくれていました。

 ○自分がその人の一歩の手助けができるような人になりたい。
 ○(少女の車椅子を通行人が運ぶ)最後のシーンが感動ではなく、日常的に見られるものになればよい。
 ○さりげない気遣いを示せるような人になりたい。
 ○私たちと異なる人が気持ちよく過ごせる社会をつくっていかなければならない。

 先日、福岡に行ったとき、路線バスに車椅子の青年が2人乗車してきました。運転手の方がすぐに運転席から乗車口に移動して板を敷き、彼らを座席まで誘導しました。車の往来の多い中、時間もかかりましたが、乗客は普通のことのようにその光景を見つめ、車椅子の青年たちも笑顔でした。社会は確実に進化しています。