全生寮新入生を対象として行われる宿泊学習であり,クラス毎に4泊5日の日程で,1学期中に全クラス実施されます。 全生寮の歴史島商は,昭和31年に島原高校より分離独立しました。しかし,最初から全生寮があったわけではありません。全生寮実施のきっかけは,昭和34年の冬休みに起きた生徒の非行問題でした。 このような事件の再発を防止するためにも,いかなる状況の中でも誤らない行動基準を集団生活の中で体得すべきだという構想が固まっていったのです。 当時も賛否両論あったようですが,PTAの賛成も得て,島原高女時代からの寄宿舎を利用し,集団生活指導が実施されることになりました。昭和35年,男子生徒のみが対象でした。 「全生寮」と命名されたのは・・・他と共に生き,他を生かすことで自分も生きるという,自他一如の精神から。以後,全生寮は新入生の全生寮教育,部活の合宿,その他の教育活動等に幅広く活用されてきました。 女子生徒も対象となったのは,全生寮が新築された昭和53年から。昭和58年には2階が増築となり,今の全生寮は,より充実した環境となっています。 全生寮の目的
全生寮本旨
全生寮の助手全生寮では,3年生が教師の助手として1年生を指導しています。そして,その助手として指導する3年生にも研修があります。 1年生が入寮する前に2泊3日の期間を設けて研修し,助手としての自覚とそれにふさわしい生活態度を身につけ,厳しい反面,細やかな愛情と責任を持って担当クラスの指導が出来るようにします。 この期間に,あらゆる状況に対処できるよう,実際の生活時間の中で清掃・炊事などの班別作業や期間中の指導方法を徹底的に研修します。助手にとっては,研修内容が多くかなりの負担がありますが, 全生寮における助手の責任は重大であり,自己の貴重な修練の場でもあるだけに助手の取り組む姿勢は真剣そのものです。 全生寮の昼食ところで,全生寮での昼食は,どうなっているのでしょう?全生寮期間中は,授業も平常通り行われています。朝食と夕食は自分達で作っていますが,昼食についてはPTA「母の会」の協力により,保護者の皆様に作って頂いています。 助手が記入した伝言板をご覧になられて献立を確認し,昼食作りをして頂いています。1年生にとってみると,この昼食が1日の中で一番おいしい食事となり,同時に保護者の皆様の愛情を感じる時間となります。 1年生の感想 (1年生感想より一部抜粋)全生寮を体験してこの全生寮で学んだ事は「全ての人とともに生きよう」という事です。自分一人がきちんとしていても他の人ができていなければ意味がないのです。そのためにも「全ての他の人を生かそう」という本旨があると思います。 そして最後に,「自己のもてる全てを発揮して生きよう」です。私もこの全生寮に入って自分はこんなに大きな声が出せるんだ,規則正しい生活を送れるんだ,それらの事を自分でできないと決めつけていたんだ…という事にも気づきました。 そして何よりも人の言葉の温かさを感じれる心と,これまでは今からやっていくのが不安だった高校生活をやっていけると思える自信が湧いてきました。商業高校に入学して,今のクラスのメンバーで,この約半月に及ぶ全生寮を体験する事ができて本当によかったです。 そしてこのクラスと4人の先輩方と出会えた事をすごく嬉しく,誇りに思います。最後まで諦めずに頑張って本当によかったと思います。 自分を変えてくれた全生寮その日はずっと実践科目の1時間の静座のことが心配でたまりませんでした。どんなに痛くても苦しくても1時間耐えてやると思っていても,やっぱり1時間という時間の長さが,私を不安にさせました。ついにその時がやってきました。 これを失敗したら全てが失敗に終わるんだと思い,1時間の座禅を始めました。最初は時間が経つのが,とても遅く感じました。途中で足がしびれ,もう無理だと思った時が1回ありました。でも,隣の人を見たら,じっとして,我慢していました。 電気がついた時,私は成功なのかどうなのか,とても不安でした。担当の先生の「上だった」という言葉を聞いた瞬間,涙が出ました。頑張って良かったと心の底から思いました。この1時間の静座のおかげで頑張るということの本当の意味が分かりました。 私はこの全生寮を通して,大きく変わることができました。また,自分の出せる力の大きさにも気づきました。最初は,先生や先輩方に迷惑ばかりかけたけど,全生寮に参加できて本当によかったです。この先,何年も何十年もずっと全生寮があってほしいです。 全生寮で考えた事私は,全生寮を通して沢山の事を実感させられました。一つは,家族の大切さです。私はこの全生寮にいて,何度も家に帰りたいと思っていました。私はいつも,しつこい父や母に腹を立てるばっかりだったのに,いざこうやって離れてみると,とても恋しくなりました。 特に班別作業をやっている時は,いつもはこんな沢山の仕事を母一人にやらせていたんだなと考えていました。汗をかきながら,腰を痛めているのに仕事をしていた母の事を思い出すと,涙が出てきました。だから,家に帰ったら5日間で学んだ行動力で,少しでも母の力になれるようにしたいです。 次に考えたのはクラスのみんなで協力する事のすばらしさです。この協力を通して,私は,周りの人の気持ちを考える事ができました。今,この人は,私に何をやって欲しいのかとか,次はこうした方がみんなの役に立つのではないかなど,先の事も考えられるようになりました。そうやって協力というのは,自分も高められるんだと感じました。 母の会の感想(全生寮アンケートより一部抜粋)研修内容について
研修終了後の様子
その他
全生寮合宿研修「三度目の正直と感謝」調査広報委員 島 﨑 藤 枝 (平成21年2月1日付島原商業高校PTA新聞「桜並木」掲載) 私の子供は三人とも,全生寮での合宿研修を体験させていただきました。長男の時は初めてでもあり,何がなんだかわからず,驚きに後ずさりしたことを思い出します。二人目の時は娘であったためか,不安と心配で落ち着きませんでした。全生寮を終えて元気に帰ってきた時はよくぞご無事で・・・(笑) 応援心と同情心の中,正直,このころまではまだ全生寮の事を良く理解出来ず,イメージだけでの思い込みがあったかと思います。研修を終了し,特にこれといった変化があった様子もなく生活していましたが,三人目の娘は入学し間もなく,全生寮の体験をとても楽しみにしている話をしておりました。 すでに社会人になっている長男から散々脅かされながらも,とにかく「社会に出た時,絶対避けては通れない。感謝するときがくるぞ」という話をしたと聞いた時,その言葉の中にたくさんの伝えたいことが込められていることを感じました。当初は感じることがなかった長男が,社会に出て悟りを得たかのように話をしてくれた事が何よりも嬉しく,私自身の答えが出た瞬間でもありました。 最初から,立派な社会人にはなれません。失敗を繰り返し,成長していく事も大切。ですが,失敗は少ないほうがいいに違いないわけで,社会に出るための準備として,この全生寮での集団生活で学ぶ仲間との協力,挨拶,礼儀,時間など貴重な体験が出来るわけですから,こんなすばらしい事はないと思いました。 また普段からできることをできる限り取り組む習慣,体も脳もあいまいでは動かない。学校教育の目指す方向の中で,いろんな体験が正しい人間形成を育てるために必要な試みであり,学校・家庭・地域との連携を通して社会のルール,感謝の心を育てる。自分たち親が手本になるよう積極的に社会参加しなければと私自身も強く感じています。 |