長崎県立長崎鶴洋高等学校
(旧長崎県立長崎水産高等学校)
〒850-0991

長崎県長崎市末石町157番地1

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平成22年度「心に響く人生の達人セミナー」

 

期日  平成22年11月15日(月)5、6校時    
場所  長崎県立長崎鶴洋高等学校体育館
講師  有限会社アメニティ代表取締役  草野弘樹 先生
演題  「起業物語」

 

 社会に出る前に少しでも社会のことを知ってもらいたいと思い講演を始めた。
どの学校でも、聞く態度を注意されているが、民間企業の立場から言えば、会社の中で注意をしてくれる他者はいない。明日から来なくて良いと言われるばかり。大変な時期にさしかかっている今、学生時代ほど甘い世界はない。社会人として2年あまりで独立したが、「自分は出来る」という確信が間違っていた事に気付いたのは起業してから。学生だから無料で会場設営などをするが、社会人は労働の対価としてお金をもらう。そのことを踏まえて話をしたい。1つでも多く学び、この先の人生に役立て、形にし、行動に移してほしい。
 学生時代は、勉強が苦手で、特に高校時代は勉強について行けなくなり、おもしろみがなくなった。集団行動が苦手で、高校時代の部活動では個人競技(空手)をしていた。精神の成長が追いつかず、腕力を暴力や問題行動に向けてしまった。親や学校の締め付けを好まず、海外留学を試みたが、日本の高校生活すら満足に送れない自分には叶わなかった。留学も出来ず、現実逃避のため家出をし、3日目に親から発見された。家出をしていた間、学校を辞める覚悟でアルバイトをした。年齢を偽り電動シャッターの会社でアルバイトをしたが、きつくてたまらず、家に戻った。退学の危機にあったが、学校長から「退学にはしないが、毎日校長室に来い。」と言われ、高校2年生から卒業まで約束を守った。進路選択時、大学進学の意志はなかったが、父親から「大学に行ったこともない人間が、大学に行ったようなことを言うなと。」と諭され、大学進学を目指したものの,1年間浪人。親から離れるため東京の大学を志望し合格した。進学後、家の中でどれだけ自由に過ごせていたかを痛感。アルバイト三昧の生活を送る。きついアルバイトをこなしながら4年を過ごした後、東京での就職ではなく長崎での就職を希望。長崎でもなるべく大きな会社で働きたいと思い、ひぐちGPに就職。社会人と学生のギャップに苦しむ。2年あまり勤めた後、会社のために心と体を使って働く先輩の姿に、自分の生き方を重ね合わせ、自由を求めて、逃げ出すように退社。会社には目標があって退社すると告げた。
 退職後は収入がなく、アルバイト(電気工事)をする。業務内容は、病院の病室にテレビを取り付ける仕事。自由でのびのびと働けたが、「アルバイトのままで良いのか。」と社長に問われる。医療介護用のマット販売を持ちかけられるとともに、会社を作ることを提案された。会社設立のための手順がわからずにいると、社長から、図書館で調べるよう教えられた。図書館で調べ、方法はわかったが、資金が調達できずにいた。平成15年8月に規制緩和により資本金が1円でも起業が可能になったため、会社設立への行動を開始。10万円の資本金でスタート。商法改正後では長崎初、九州では6(7)番目の会社となる。祖母の自宅の一室に机、電話、FAXを置いて会社とした。営業の経験もあったので自信があったが、半年あまり商品が全く売れなかった。病院への訪問販売を開始するも、知名度や訪問先との信頼関係がないため、訪問すらさせてもらえない状況。進めば進むほど出口のないトンネルの奥に進んでいく感じだった。上司も先輩もおらず、だれもアドバイスをしてくれる人もいなかった。営業にも金がかかる(ガソリン、資料代など)。とにかく前に進むしかない状況にあり、福岡や熊本、佐賀にも営業エリアを広げた。そんな中で、ようやく自分の間違いに気付いた。知名度のなさ、商品の案内方法のまずさなどを指摘された。データを提示するなど営業方法を改善し、長崎の病院でも興味を持って話を聞いてもらえるようになった。次第に販売数は増えていくが、経営はどんどん苦しくなる。事務用品会社の人から、紙おむつなど介護用品の販売会社の社長を紹介され、介護用品の取り扱いを始める。なかなか販売にむすびつかない時期もあったが、次第に軌道に乗る。行動する時には、結果より先に壁がやってくる。0件のお客さんから1件に増やす時が一番苦しかった。方法が見つからなかったからである。
 ものが売れ出すと、大きな問題が持ち上がった。マットは自分の会社しか取り扱っていなかったが、他の介護用品は、同業他社が多数存在する。自分の会社の売り上げが伸びれば、当然他者の売り上げは減る。メーカーに圧力をかけて自分の会社に商品を卸させないように仕向けた同業他社もあった。また、悪いウワサを流されたこともあった。自分の会社が頑張ったからこそかと思い、今は良かったと思える。また、どうしたらお客さんに買ってもらい、喜んでもらえるかを考えるようになった。カタログと実際の商品が違う、合わないと思う。そのようなケースが増えてきた。最初は、自分の会社の在庫になってしまうので返品できないと答えるしかなく、顧客とのトラブルになることもあった。しかし、これは顧客の都合ではないと考え、返品を可能にしたところ、販売が伸びた。返品後の商品の販売方法として、事務所に店舗を作り販売している。
 会社設立から9年目だが、最初の3年はなかなかうまくいかず、車や事務所で寝泊まりする状況だった。しかし、その経験が、自分を支え、勇気づけてきたと思っている。いろいろな人に支えられ、今、仕事をさせてもらっている。自分で何でもやれると思っていても、どこかで誰かに助けてもらっている。学生時代共に学んだ仲間は、やはり大切なものだと思う。

(資料・考え方のヒント について)
物事には原因があり結果につながる。結果は皆さんの考え方次第。
・ささいなことにこだわる。 
営業をしていたときに、ちょっとした相手の仕草などにこだわって自分の経験として生かすようにした。小さな事にいかにこだわるかが大切。イチローの打席への入り方が良い例。
・昨日の自分を超える努力をする。
何げない一日として過ごすのは危険。昨日と同じ事をしていては成長しない。昨日より良くなっているかどうかを自覚して行動に移さなければ成長しない。
・大きな成功より小さな成功
大きな成功のためにどれだけ小さな成功を積み重ねるかが大切。
・本を読む
3年間で一番大変なときに本屋に行った。だれも何も教えてくれないときに、自分を高めるために本を読んだ。
・目標を立て実行する
最初に大きな目標を立て、小さな成功を重ねる。その結果、大きな成功につながる。
・限界は自分でつくるな
マットレス販売をあきらめて介護用品への販売に移行しようとした時、展示会にかつて自分が一生懸命売っていた商品が展示され売り上げをのばしていた。今更売ることが出来ない商品であり、自分があきらめたことが敗因であった。
・夢や目標が叶う姿を想像する
常に成功した自分を想像してほしい。想像したことが実現するようになっている。
・自分をほめてくれる人より否定してくれる人と仲良くする
自分を否定されるのは嫌なことだが、批判してくれる人の方が自分を冷静に見てくれているし、成長を願ってくれている
・常識とされていることの逆をやってみる
常識が全て正しいとは限らない。正しくないと思うのであれば、正しくないということを証明する努力が必要。

 私の経験が間違っていると思うのであれば、何処が間違っているのかを皆さん自身で検証してみてほしい。

・部活で成績を上げる方法。
(1)部活の前、後にお互いにプラスになることを言い合う(お互いを誉める)
(2)目標や希望、夢を貼る。書く。(実現するか否かは問題ではない)

 自分が今まで頑張ってこられたのは、誰かがほめてくれたから。試合前に相手を見てはいけない。相手が強いと思った時点で負けが決まる。マイナス要素を考えずに、自分のスタイルを貫けば、必ず良い結果が出せる。
行動しなければ結果は出ない。この瞬間にいかに、どう行動するかが大切。高校時代の今、行動してほしい。
少しでも皆さんの心に変化が出ればこの講演も成功だと思うし、私の願いでもある。
〈質疑応答〉
・学生と社会人の違いは?
一言で言えば「責任」が違う。労働に対する対価をもらう立場はプロなので失敗は許されない。自由も増えるが責任も問われる。

 非常に就職が厳しい状況だが、どうすれば就職できるか。 どのような考えを持って過ごしてきたかを、どのように表現するかが問われる。面接官はプロなのですぐに見抜かれる。率直に思いを伝え、面接官の心を動かさないと難しい。勉強したことをどのように就職活動に生かすかが大事だと思う。